コロナウイルスと4つの崩壊

2020年06月02日

 今回のコロナウイルス感染症に伴い、「医療崩壊」という言葉をよく耳にするが、私の目には「医療崩壊」だけでなく他のところも崩壊しているように映っている。

  1. 医療崩壊
    感染症用の病棟が足りず、既存の他の医療が行えないという物理的な問題である。そもそも医療行為とは何かから見直すべきである。
    例えば、現在末期がんの患者は、これ以上の医療行為は不可能ということで病院から拒否され追い出される。私自身その家族として途方にくれた経験がある。コロナウイルスの患者は医療行為からすれば隔離と人工呼吸器による延命治療以外ない。とすれば現状の定義からすると医療行為外の患者ということになる。医療について今一度見直すべきである。
    
  2. 政治崩壊
    国会議員約1000名、地方議会議員3万名。彼等は高額報酬とその身分を保証された状態なのに、今回何を提案し行動したのだろうか。ここを削って保健所職員を増やしたほうがよいと感じたのは私だけだろうか。
    さてどのくらい削減するのがいいか考えてみた。行動抑制8割から推計すると議員数は2割の国会議員200名、地方議員数6千名にするのはどうだろうか。あながち無茶な数字ではない。例えば米国の国会議員数は535名(上院100名、下院435名)である。人口当たりで比べると日本の議員数はアメリカの4倍になる。アメリカと同じ比率にすると日本の議員数は現在の25%の250名となる。結構近い数字になる 。
    
  3. 行政崩壊
    国家公務員58万人、地方公務員274万人もいながら、マスクも10万円も国民に届けられない硬直化した行政組織ということが見えた。さらにこの硬直化した組織を食い物する輩も出てきている。マスクの調達先、466億円のうち公開されているのは4社90億円(4月22日現在)のみ。マスクは形のあるものだからいずれ究明されるだろう。
    マスクよりさらにえぐいのが緊急経済対策費2兆3176億円だ。委託先が広告宣伝会社の電通に749億円で再委託されていたことが報道されている。
    行政はお役所仕事と言われて遅いがそれでも公務員の皆さんが持っている基本ポリシーは公平、公明正大さである。だからこそ国民もそれを信じ我慢してきた。電通のポリシーはそれとは真逆である。税金は無駄に使われてはいけないが利益だけを求めるビジネスの食いものされてもいけない。
    
  4. 家庭崩壊
    これは深刻だ。学校の休校と在宅ワークになり、子どもと亭主が24時間家にいることで家庭崩壊が目立ってきている。実際私の身近なところでも「きっとあの夫婦、解除後離婚ね」という噂を耳にすることが多くなった。
    ということは今回のスティホーム作戦は2波、3波では「ホーム」そのものが使えない可能性がある。

考察

 「4つの崩壊」はそもそもコロナウイルスが原因なのかと考えみた。
例えば、「家庭崩壊」だがその予兆はあった。岩村暢子氏の「食にみる現代家族」の講演で、現代は家族団欒の食事はしておらず個人バラバラに家でもしている。という話を聞いて愕然としたことがある。
https://tomoiki.jp/report/19_02_351.html
 「政治と行政の崩壊」も森友・加計問題でその予兆は見えていたし、最近では検察黒川問題でも公平、公明正大から遠く離れた事態があった。
 「4つの崩壊」はコロナウイルス禍によって「不都合な真実」が表面化されたすぎない。まあ簡単に言えば、うすうす「おかしい」と感じていたことが「はっきりとした姿」として「やっぱり、おかしい」と人々の前に現れたということだ。

結論

 国家という「共同幻想」の像が崩れ「擬制の終焉」をもたらした。
 人の価値観も生活様式も変わった以上、国の在り方をもう一度見直したほうがよい時に来ている。ウィズ・コロナの「新生活様式」への変更というレベルでなく、そもそも社会、個人の在り方を変える時がきたと思う。
 変わることは痛みも伴うがそれが嫌でここまできてしまった。これから自分たちのことだけでなく、生まれてくる子供たちのことを考えて、その子たちが安心して心豊かな生活を送れる国を残すために、私たち一人一人が「覚悟の生き方」をしていかねばならないと受け止めている。

追記 難解な吉本隆明の「共同幻想論」、「擬制の終焉」、「言語にとっては美とは何か」など読んでほとんど理解できなかったが胸が熱くなった若い頃を思い出した。

中島 高英